Type116(1972〜1980)
発売時参考価格(万円):'79年280SE(852)、'79年450SEL(1064)、'80年450SEL-6.9(1980)

116.jpg

Chassis
Data
全長
(mm)
全幅
(mm)
全高
(mm)
ホイール
ベース
(mm)
トレッド
(mm)
サスペンション
形式
重量
(kg)
4960
5060(SEL)
1870 1425(S,SE)
1430(SEL)
1415(6.9)
2865
2965(SEL)
F:1521
R:1505
F:Wウィッシュボーン
R:セミトレ
1660(280S)
〜2010(6.9)

Engine 280S 280SE(L) 350SE(L)
DOHC.直6
2746cc
160ps
DOHC.直6
2746cc
177-185ps
SOHC.V8
3499cc
200ps
450SE(L) 450SEL
6.9
300SD
(Turbo)
SOHC.V8
4520cc
225ps
SOHC.V8
6834cc
286ps
SOHC.直5
2998cc
115ps

 1972に登場した116シャーシは先代のW108/109に比べてより大きなボディサイズとなり、そのラインナップはSクラスと呼ばれるようになりました。W116の開発に当たって最も重要視されたのは安全性の向上であり、各ボディパネルは一層厚いものとなっているのが特徴で、外観的にはそれまでの縦目時代に別れを告げ、R107に採用された横長のヘッドライトが最も目を引くものでしたが、これも夜間の視認性向上のために大型化を検討した結果、採用されたものでした。

 W116はシャーシ関係も大幅に新しくなっており、随所に革新的な設計がされています。まずリアサスはW114/115やR107の例にならい、アンチリフト/ダイブ機構を取り入れたセミトレーリングアームを採用。フロントサスはWウィッシュボーンという形式こそ変わらないものの、MBでは初めてサブフレームを廃止し、ゼロオフセットジオメトリーのステアリングやアンチダイブ機構も初めて採用されました。また全てのモデルで標準装備となったATは、W109のそれが遊星コンバーターを用いた4段変速だったのに対し、一般的なトルクコンバーターを用いた3段変速となっています。

 発売当初のラインナップはV8シリーズの350SE、450SE、450SELのほか、直62.8LエンジンもDOHCになって復活し、キャブ仕様の280Sとインジェクター仕様の280SEが用意されました。これらのラインナップは基本的にW108/109の後期を引き継ぐものでしたが、エアサスを装備するモデルが無くなったことでシャーシ形式は全てW116に統一され、モデル名も全て排気量を示すものとなっています。また74年にはロングバージョンの好評に答えて、280SEL、350SELもラインナップに加わっていますが、W109/300SEL 6.3の後を継ぐべきモデルはありませんでした。

 6.3の後継モデル不在のままデビューから3年が経過したW116でしたが、1975年のフランクフルトショーにおいてその時はやってきました。W116の最高峰450SEL 6.9の登場です。エンジンは6.3がアルミ製シリンダーブロック/ヘッドだったのに対し、ほかのV8エンジンと同じ鋳鉄製の90度バンクV8-SOHCでしたが、107mm×95mmのボア×ストロークによって排気量は6834ccという驚異的な数値にまで拡大。最高出力286ps、最大トルク56mkgという強大なパワーを発揮しています。また低いエンジンルーム内にこの巨大なエンジンを収めるために、レーシングカー並みのドライサンプが採用されていました。450SEL 6.9は大型化したボディと数々の装備によって重量が2トンを超える巨体になりましたが、この強大なエンジンによって走行性能は最高速度225Km/h、0-100km/h加速7.4秒という300SEL 6.3に並ぶ数値を示しています。

 450SEL 6.9のサスペンションには独自のシステムが考案され、前後ともにコイルスプリングの代わりに窒素ガスを用いた、ハイドロニューマティックサスペンションが採用されました。これは窒素ガスを封入した球状のサスペンションとアームをストラット(ショック)で結び、カムシャフトで直接駆動するオイルポンプによって、高圧アキュムレーターを介して各ストラットにハイドロリクス・オイルを送り込むことで、自動的に車高調整をするという凝ったシステムで、どんな荷重がかかっても車高が変化しない事から、あらゆる環境において優れた乗り心地を実現していました。後にW123のワゴンやW126などにも同じようなセルフレべリング機構が装備されますが、これらに採用されたシステムは6.9のシステムを簡略化したものであり、装備されているのがリアサスだけであることと、サスペンションそのものは通常のコイルスプリングを用いている点が6.9とは異なります。

 そのほかのモデルではオイルショックの最中であった1977年に、このクラスでは久しぶりのディーゼルエンジンを搭載した300SDをラインナップに追加。ターボを装着することで115psを発揮し、経済的なモデルとして好評を博しました。また79年からは一部モデルにABSが標準装備されますが、後継モデルであるW126の登場に伴い、1980年モデルを最後にW116の生産は終了しました。