W114/115は既に新しい世代に移行していたスペシャリティ・クラスのW108/109を追う形で、1968年1月に発表されました。それまでの小型モデルW110が、旧態然としたラウンドシェイプやテールフィンが特徴だったのに対し、新しいW114/115は一転してW108/109とよく似た直線基調のシルエットと縦目ヘッドライトを手に入れ、非常に近代的なスタイルへとモデルチェンジ。W108の小型版という意味で、「コンパクト」と呼ばれるようになりました。(注:W201登場以前はこのクラスをコンパクトと呼びました)
外観以外にもW114/115は斬新な特徴を併せ持っていました。まずW110より一回り大きくなったボディは上位クラスのW108と同じ長さのホイールベースを持ち、前後のオーバーハングを切り詰めることで、車体はコンパクトながら広い室内空間を実現しました。またリア・サスペンションにMBでは初めてのセミトレーリングを採用。これによって操縦安定性は格段に良くなり、後の全てのモデルに順次採用されていくことになります。ブレーキも4輪ともにディスクブレーキになり、これらの装備によって優れた走行性能を手に入れたW114/115は、W110を含むそれまでの小型車種の位置づけだった、上位クラスの廉価版という立場から脱却したとも言えます。
W108/109がサスペンションで区別されるのとは異なり、W114/115という車体形式は搭載エンジンによって区別されます。即ち、ガソリン&ディーゼルの4、5気筒搭載車がW115、6気筒搭載車がW114です。ボディサイズは全く共通ですが、フロントグリルの形状が若干異なります。発売当初のラインナップは、200、220、230-6、250、200D、220Dの6モデル。その後約1年遅れでクーペモデルの250Cと250CEが追加。この当時は車種名の末尾が「E」の場合はインジェクター仕様であることを指し、250クーペにはコンパクトでは初めてキャブレター仕様とインジェクター仕様の両方が設定されました。 70年には280(セダン)と280C(クーペ)が登場。72年にはマイナーチェンジを迎え、後期型へと進化します。
72年のマイナーチェンジは多岐に渡るものでした。冷却効率を高めるためにフロントグリルが大型化され、フロントバンパーはそれまでのダブルバンパーからシングルバンパーへと変更。リアバンパーのデザインも変更され、それに伴い全長は100mm短縮されます。サイドミラーはR107から採用され始めた、室内から調整できる新型に変更。サイドウインドウの三角窓も廃止されました。また室内に至っては完全にデザインが一新され、より近代化されたものになりました。そしてこの内外装の一新に伴い、MBは全く新しい設計の2.8Lエンジンを開発し、ラインナップに加えます。この戦後初のDOHCヘッドを備えたM110エンジンはキャブレター仕様(280、280C)で160ps、インジェクター仕様(280E、280CE)で185psという高出力を誇り、後のW123においても主力エンジンとしてモデル末期まで搭載されました。W114/115シリーズは76年モデルを最後に後継モデルであるW123へとバトンタッチしますが、クーペモデルだけはW123のクーペが登場するまで販売されていたため、少数ながら77年モデルが存在します。
|