1994年に発表されたW210は、その革新的なスタイルで大きな反響を呼びました。W124より一回り大きくなったボディは、スラントノーズを持つ流線型スタイルとなり、約30年ぶりに丸形ヘッドライトが採用されていました。このヘッドライトは社内呼称で「New Eyes」と呼ばれ、21世紀のMBデザインが向かう方向性を示唆しています。 拡大されたのはボディサイズだけでなく、ホイールべース/トレッドも拡大されたシャーシに、W124から継承されたフロント:Wウィッシュボーン/リア:マルチリンクのサスペンションが組み合わされました。
W210のボディにはサッコパネルは採用されず、ボディ同色のモールを備えたスムーズなボディラインになりましたが、エクステリアだけでなくインテリアもW124とはかなり印象の違ったものになりました。曲線を多く使ったデザインもさることながら、助手席側エアバッグをダッシュボード上に配置することで復活したグローブボックス、長年採用されてきた可倒式アームレストを廃して採用されたセンターコンソールボックス、1DINから2DINになったオーディオスペースなど、使い勝手が大幅に改良されています。また上級車種に装備されていたメモリー付きパワーシートや、電動テレスコピックチルトステアリングなども標準装備となっていますが、 90年代のMB車に共通するテーマである「コストダウン」はこのW210でも確実に実践され、販売価格はW124と比べて同型エンジン搭載モデルで約100万円安、という大幅なコストダウンに成功していました。
発売当初のラインナップはE200、E230、E280、E320、E420、E300TDといったもので、W124の最終期とほぼ同じDOHCエンジンによるラインナップを形成していました。しかしATはそれまでの油圧制御4段(24Vモデルなどは5段)ATに別れを告げ、新たに開発されたロックアップ機構つきの電子制御5段ATを採用。そのほか車両制御システムとしてASD、ASRなどももちろん装備され、またこれらの電子制御系の超高速データ通信システムであるCANデータバスが搭載されたことで、車両の統合的な制御を可能にしています。ラインナップのバリエーションとして、クラシック、エレガンス、アヴァンギャルドという各ラインも設定されましたが、日本仕様ではクラシックラインに準じた標準設定とアヴァンギャルドのみ設定され、エレガンスラインは設定されていません。
1995年にはステーションワゴンもW124からW210シャーシに変更。Cクラス(W202)のステーションワゴンがW124Tに酷似していたのに対し、W210Tは先に登場していたセダンと同じように、カーゴスペースまでが流線形のラウンドシェイプでまとめられているものでした。そしてTモデルの登場とほぼ時期を同じくしてセダン、ワゴンの両方に四輪駆動の4-MATICが登場。しかしW124の4-MATICの難点だったハイコストと、複雑な構造によって引き起こされるトラブルへの対策として、W210では前輪35%:後輪65%のフルタイム4WDとなりました。また歴代のミディアムクラスに用意されていたクーペモデルやカブリオレは設定されず、それらの後継モデルには96年発表のCLKが該当します。
1996年、MBはSOHCの新しいV型エンジンを発表。1気筒あたり吸気2排気1の計3バルブという変則的なレイアウトに、シングルカムシャフトを組み合わせたこのエンジンはデュアルプラグ化され、高い燃焼効率と低い未燃焼ガス排出量を実現しました。また従来の直列エンジンに比べて大幅に軽量化されているのも特徴で、3.2Lエンジン同士の比較では約50Kgの軽量化に成功。総体的に低燃費を実現するエンジンとなりました。このエンジンは97年からW210に搭載されることとなり、それに伴いE230とE420が消滅。変わってE240とE430が登場し、E280とE320も新型エンジンとなりました。また同時に新デザインの5穴ホイールも登場し、アヴァンギャルドなど一部の車種に採用されています。また同じく97年からキセノン・ヘッドライトが標準装備になっています。
1998年モデルでは、97に発表された直噴ディーゼルエンジン搭載車(E200CDI、E220CDI)がラインナップに加わった(日本未発売)のと、インダッシュTVが一部車種で標準装備になったのが主な特徴です。
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