三ツ星倶楽部 其之一 W124 300E 4/4 W124に昭和を感じる?
構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之
170 ここでひとつ議題に上げたいんだけど、果たしてW124は今後クラシックカーと呼ばれる存在になり得るか?
AKU 興味深いですね。でも、それにはクラシックカーの定義が必要でしょう。
170 ふむ。しかし、それを検討していると明後日まで不眠不休になりそうだな。
(ここで本日のカメラマン、山田裕之さんが乱入!)
山田 それなら、すでにクラシックカーですよ。この前、女の子にそう言われましたから。
170 どこの女の子? 素人? キャバ? アキバ?
山田 それはちょっと……(苦笑)
AKU 実は山田さん、僕が譲った1994年型のE320に今も乗っているんです。
山田 どこの女の子かはさておき、今の目線では十分に古く見えるみたいですよ。
170 年式のせいかな? でも、女の子には年式までわかんないよね?
山田 あと、警察によく止められます。四角い目は、なんかヤバそうだからって。
170 そうなの? 山田さんのルックスじゃなくて?
山田 ……
AKU え~、僕の個人的な意見ですが、クラシックカーの定義には、年式や年数は関係ないかもしれないと思うんです。前に1978年あたりの『カーグラフィック』を読んでいたら、クラシックカー専門!ていう店の広告が載っていたんですけれど、扱っているのは’60年代の車種なんですよ。あの当時で10年から20年のタイムラグでしょう。じゃあ今’90年代前半のクルマを胸を張ってクラシックって言えるかって言うと、そうじゃないですよね。だとすれば、やはり人は形状でボーダーラインを引くのではないかと。その要素のひとつはバンパーだと思うんです。それがメッキの鉄バンパーだったら、完全にクラシックの範ちゅうに入るんじゃないかと。
170 じゃアクちゃんの推察でいけば、W124はクラシックにはなれないね。樹脂でしょ、あれ。
AKU 成型色そのままの初期型なら、どうかなあ。
170 それはまたマニアックな視点じゃないかなあ。ひとつ前の型ならどうなの?
AKU W123はメッキだしボディと別体でしょう。だからかなり古い感じになる……。ただクラシックカーとして愛でられるには台数も条件になりますよね。現状、W123もW124も中古市場で数多く出回っているし、そういう意味ではまだクラシックカーと呼べないかもしれませんね。名車ではありますけれど。
170 中古車の実態はどうなの? 価格は手頃になってきたと聞いたけれど、程度は?
AKU 中には100万円代でも良好なコンディションを保った車両はありますね。
170 じゃ、腐ってもベンツだろうと思っている人や、熱烈なW124ファンにすれば、今はナイスな時期なんだ。
AKU そうですね。走行距離の少ない程度の良いのがあれば買い、です。ただ、そういう個体は少ないし、安いからと言ってボロボロのに飛びついて乗ってるのはカッコ悪いですよね。キレイかボロイかでまったく他人からの評価が変わる。今はそういう微妙な時期だと思います。W124は。
170 話は変わるが、今日乗った300Eは素晴らしい。シャキッとしてる。
AKU 1992年型で実走行3万5000キロのフルノーマル。300Eとしては最終型。オーナーは何人か替わっているようですが、大事にされてきたみたいです。腐っても鯛じゃないけれど、時間の経過でたやすくボロくなっちゃうと大切にされにくいですよね。その点W124は元の設計がしっかりしているから、こういう歳のとり方ができると思うんです。
170 個人的には布シートがステキ。革シートだと、当時無理した人たちの匂いが染みついているような気がするんだ。でも、そこは布シートのセダン。分かっている人が買ったんだろうなあと、ホッとするね。
AKU 僕はW124に昭和っぽさを感じるんですよ。
170 ドイツ車、だよねぇ?昭和を感じる?
AKU そうなんですけれど、物づくりの思想とか、品質の良いものが長く生き残る様子とかに、まともだった昭和のイメージがダブるというか。だから、樹脂に愛着が持てないとかそういう次元の話ではなく、分かる人にだけとは言わないまでも、あまりイジリ倒さないでいたいクルマですね、W124は。出来ればフルノーマル。ただそれだとリアルなところでは50歳過ぎとかじゃないと似合わないと思いますけど。白髪の老婦人が運転席から降りてきたりしたら、相当にカッコいい。今日の300Eなんかはまさにそういう感じですね。
何てったって走行約3万5000kmですから、オーナーの手厚い保護の甲斐もあって、まだまだ新車の雰囲気が残ってました。これからもフルノーマルのままで、時代の生き証人として残っていってもらいたいものです。ごちそうさまでした!
1992y Mercedes-Benz W124 300E