添加剤の真実:1 |
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理論的に考えてもテフロンがエンジンの潤滑に向かないことは明らかです。 金属同士の潤滑には流体潤滑、境界潤滑、極圧潤滑、固体潤滑などがあり、この中でもっとも摩擦が小さく摩耗が少ないのは流体潤滑で、これは油膜を維持し金属同士の接触が発生しない状態での潤滑です。 そのため、シリンダー内面には油膜を保持するためクロスハッチと呼ばれる非常に細かい傷が斜めに「わざわざ」入れられているのですが、添加剤メーカーの主張通りこれらの溝がテフロンで埋められてしまったら、オイルが保持できなくなって油膜切れをを起こします。 ここで重要なのは、完全にテフロンコーティングされた金属同士の摩擦(個体潤滑)より、間に油膜を保持し金属同士が接触しない時の摩擦(流体潤滑)の方が、遙かに抵抗が少ないということです。実際、車の中でも極圧潤滑や個体潤滑は、デフやギアの軸受けなど流体潤滑が使えない場所に限って、「仕方なく」使われているわけです。しかも、この場合にも潤滑剤としては、リン系、塩素系、硫黄系などの極圧潤滑剤や二硫化モリブデンなどが使われていて、テフロンは使われていません。 なぜなら、添加剤メーカー自身が認めているように、高荷重時の潤滑にテフロンは定着しないからです。 つまり、流体潤滑が正常に行われているエンジン内部においては、そこにテフロンにせよチタンにせよ、あるいは共晶膜とかが金属表面にどう定着しようが、油膜保持に悪影響を及ぼすことはあっても、摩擦特性にプラスに働くことはあり得ない上、ギアやデフの極圧潤滑にもテフロンは役立たずなのです。 特にエンジンに限って言えば、いくらテフロンが摩擦特性に優れるからと言って、わざわざ流体潤滑を阻害してまで金属同士を接触させるような個体潤滑にする必要がなぜあるのか。 ナンセンス以外の何者でもありません。 また、スベリ速度が変化する(おむすびが回るので)カムシャフトまわりは、条件が厳しくて一部境界潤滑領域に入ることが知られています。 従って、どんなオイルにも元々入れられている摩擦係数に関する添加剤は、この領域でこそ性能を発揮するものが求められます。 ところが、マイクロロンの説明書にもある通り、「大きな圧力がかからない場所において効果は半永久的」とか「面精度が高い場所にテフロンは定着できない」とあるように、ここでもテフロンは役に立ちません。 先日、よく遊びに行く整備工場でポルポル924のエンジンをオーバーホールしていました。 この車、オイル交換の度に、ご丁寧にマイクロロンを入れていて(3回連続して入れたそうです)、前回の交換後初めてサーキットを走ったら油膜切れを起こして焼き付いてしまったものです。 原因がマイクロロンかは、この際置いておくとして、いくつか面白いことが発見できました。 まず、ピストンリングやシリンダーの壁面は、テフロンコートされたフライパンみたいにオイルが玉になってコロコロ転がるなんてことはなく、幸い(?)油膜はちゃんと保持されていました。 クロスハッチの溝をテフロンが埋めるということは全然なくて、宣伝文句にある金属表面に定着して云々というのは、少なくともこの車には全く見られませんでした。 次に気づいたのは、レッドライン15W-50という固めのオイルに交換してまだ100Kmも走っていないにもかかわらず、手で触った感じは、ほとんど水に近いようなシャビシャビになっていたことです。 クーラントと混ざった形跡はありませんでした。 ちなみに、ここの親父さんが言うには、深夜番組でよくやっているモーターアップが入ってたやつは、逆に粘度が上がっていたということです。 この辺に添加剤の秘密があるように思えました。 実際にマイクロロンなどをエンジンに添加すると、回りが軽くなってトルクアップした感じがするという報告も数多くあります。 流体潤滑では、摩擦係数はオイルの粘度に比例するわけですから、これらの添加剤が、オイルの粘度を下げる効果を持っているとするとこういう現象とも符合するわけです。 しかし、むやみ安易に添加剤で粘度を下げることは油膜切れを引き起こし、エンジンにダメージを与えます。 低粘度オイルでのこういうレスポンスを求めるなら、最初から信頼できるメーカーの 5W-30などといった化学合成オイルを使うべきです。 エンジンオイルは、それ自体添加剤の固まりだと言って過言ではありません。 ベースオイルに粘度調整剤、酸化安定剤、消泡剤などなどオイルメーカーが日夜研究し、彼らが最高と考えるバランスで調合されています。 敢えてこのバランスを崩すメリットがあるとしたら、サーキット1周目はどんなオイルよりタイムが出るけど、2週目には焼き付くよ、などという、とてもオイルメーカーが恐ろしくて作ることの出来ないオイルを自作できるということぐらいでしょうか。(笑) (原文まま) |
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