ベンツ純正LLC
LLCの基本的な成分はJIS規格では、エチレングリコール90%以上+水分5%以下+添加剤と決められています。 この添加剤には防錆や防食剤、消泡剤、安定剤などが含まれますが、防錆剤にリン酸塩系かケイ酸塩系を使用するかでLLCは大きく二つの種類に分けられます。 国産メーカーのものは、ほとんどリン酸塩系の防錆剤を使用していますが、欧州の水はカルシウムやマグネシウムを多く含む硬水ですので、リン酸塩系防錆剤を主成分とすると、希釈時にリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムなどを生じてしまい、固着・目詰まりの原因になってしまいます。 そこで、メルセデスの純正LLCは、リン酸を含まず、ケイ酸(シリケート)を防錆剤の主成分としています。 ケイ酸(シリケート)とは、乾燥剤で知られるシリカゲルのような物質なのですが、ケイ酸末端が Si=O ではなく Si(OH)2 となるように処理されていますので、水溶液は水酸化物になって、錆が広がらないように水回路の内面を覆います。 このときケイ酸特有の反応として、錆をまきこんでコーティングをしますので、ポンプ内面やホース内面など、すべてが錆色で覆われることになります。 ベンツのラジエターホースを交換したときなど、ホースの内側が錆で真茶色になっているのになっているのを見て、ちょっと心配になった方も多いのではないでしょうか? でも、ベンツの純正LLCを使っている限りは、これで正常なんですね。 このコーティングは錆の予防のほかに、もうひとつ大切な機能を持っています。 それはキャビテーションによる腐食の防止で、水ポンプの作り出す泡により機械的にポンプ内面が削られることを防ぐ、クッションの役割を持ちます。 ただ、ケイ酸塩系防錆剤は、親和性が低いために一般に抗分離剤としてシリケート安定剤を添加するのですが、一度分離してゲル化してしまうと再び溶けることがないので、防食性能が低下し、アルミに腐食が生じてきます。 実際アルミブロックが浸食して、中にはエンジンに穴が開いたという事例も報告されているのですが、多くは社外の粗悪LLCを使用していたか、純正でも5年以上無交換というケースだったようです。 他メーカーのLLCは、同じ色をしていても中に含まれる添加剤の種類はもちろん、エチレングリコールの純度自体が異なることがありますから、交換や補充時には混ざらないよう注意が必要です。 特にメルセデスには、LLCタンクの出口にも補充用のシリカゲルパックを持っているものもありますから、こればかりは絶対に純正がお勧めです。 |