トウガラシ
子供のころ近所に韓国から仕事で一家そろって引っ越してきた家がありました。 ちょうど私と同い年の女の子がいて、言葉はあまり通じませんでしたがたまに一緒に遊んだりしました。 お父さんは財閥系の企業にお勤めで、いわゆる良いところのお坊ちゃんだったそうですが、お母さんが田舎の出身で確かに素朴な感じのひとでした。 あるときその子の家に遊びに行ったとき、庭先で何やら赤くてとても綺麗なシシトウのようなものが天日干しされてしました。 「美味しそう!」と言うと、お母さんがカタコトの日本語で「日本のと違って甘いんだよ。ちょっとかじってみる?」と言われて一本丸ごと口に放り込んでしまいました。 このとき多分生まれて初めてトウガラシというものを口にしたんだと思いますが、まあその後の顛末は皆さんのご想像の通りです(笑) それ以来ずっと苦手な食材になっていたのですが、最近ようやくこれを美味しいと思えるようになりました。 そんな話を会社でしたら、もっくんがわざわざ持ってきてくれました。 裏庭で自然生えしていたそうです。 少しだけかじってみたら、あの日のことが鮮明に蘇ってきます。 でもその一家は2年ほどで帰国してしまい今は名前ももう覚えていませんからもう会うこともかないません。 そう思うとヒリヒリの中になんだかちょっとだけすっぱい味もするような気がしました。 By 北川 |