危険なダクトホースの流用
ここ最近、M117(W126などの V8エンジン)のエアダクトホースの右側だけ立て続けにご注文を頂きます。 弊社社長が最近 126にハマってブログで書きまくっているせいで、126乗りのお客様が増えてきたせいなのかもしれませんが、それにしても「何で右側を2本なんだろう」と思っていました。 ショッピングカートでのダイレクトのご注文でしたので、適合の確認も出来ずにいたら、気心の知れたW124 500Eのお客様から同じお問い合わせを頂いたので聞いてみると「オフ会の集まりで他のメンバーさんから、あるサイトでこの117のダクトが 500EのM119エンジンに装着出来ると紹介されているって聞いたんだけど」ということでした。 (左側が117エンジン用、右側が119用です) 確かに価格は、117用のほうがM119のダクトホースと比較をすると全然安いですが、思い出してください。このダクトホースの経緯を。 W126の時代の5リッターはKEジェトロのM117エンジンでした。 このエンジンはそれほどの熱を発生せずエンジンルームにも余裕があるため、エンジン回りの温度もそれほど高くはなりませんでした。 その後、R129のKEジェトロのM119エンジンに発展しますが、この時点でもエンジンルームはそれほどの温度には上昇していません。 それから、M119エンジンがLHシステムに変更されて、W124 に搭載されたのですが、そもそもこのエンジンがそれまで以上に熱を発生する上、スペース的に少し無理があったこともあって、エンジンルーム内は予想以上の高温になってしまいました。 高速走行を終えた500Eがサービスエリアでボンネットを開けているのは、別にエンジンを見せびらかしたいわけではなく、そうせざるを得なかったということもあると思います。 この高温になるエンジンルームで、当初はプラスティックのダクトホースは変形をしたり、穴が空いたりしてクレームが多発しました。 メーカーは対策として、変形を抑えるためのスプリングで内部から補強を一度行いました。 それでも穴あきのトラブルが発生して、今度はスプリング補強されたホースを更に断熱用のインシュレーターで覆う対策を行っています。 119-090-0782(初期ロッド/スプリングもインシュレーターも無い) ↓ 119-090-1182(スプリング補強) ↓ 119-090-1482(スプリング補強の上に更にインシュレーター付きの現行品) です。 メーカーが苦労して対策をした部品を価格だけで従来の対策前と同じか、それ以前の状態に戻すのはかなりのリスクがあると私は考えます。 ダクトホースが変形したり穴が空いたりするとエンジンルームの高熱の空気を取り入れてしまいます。 吸入温度が高いとノッキングが発生しやすくなり、点火時期を遅らせるので遅くなるし燃費も悪くなります。 それだけならまだいいのですが、ダクトホースの先には吸気温度センサー、エアマス、スロットルとまさにM119エンジンの要の部品が存在しており、これらに悪影響が及んだらかなり高額な出費を覚悟しないといけなくなります。 今の季節ならまだしもゴールデンウィーク頃になると外気温度も上昇してきますので500Eには厳しい季節となります。 その状態でM117のダクトホースを使用するのは500Eの寿命を縮めているようなものです。 この流用のことが書いてあるサイトをざっと探してみましたが分かりませんでした。 SNS内か何かで、部品の本質的な知識のない一般オーナーさんが善意で公開した情報なのでしょう。 いや、もしかすると、最初のソースは、「物理的に流用は出来るけどやるべきではない」というものが「やってはいけない」の部分が削られて「流用できる」の部分だけが独り歩きしてしまっているのかも知れません。 ネットの情報はそういうことも多いですから。 いずれにせよ、ソースを探して確認するよりも、先にお客様に公開をしておくべきと判断を致しました。 涼しいとき、涼しいところでしか乗らないというのならいいのかもしれません。 それでも、SPEEDJAPANでは、このM117のダクトホースをM119エンジンに使用するのは、お勧めはしません。 リスクは承知の上で、どうしても装着してみたいという場合は、あくまでも自己責任での取り付けとなりますのでご注意ください。 すでにバスケットでご注文をされているお客様にも個別でメールを送信いたします。 By k |