うん十年前、学生時代の話です。
まだつきあいはじめたばかりの彼女から半べそかきながら急に
「今日のデートはキャンセルして欲しい」との電話。
聞くと、要するにバイトで書いている原稿が締切りに間に合わない
ということらしい。
何だか分からないけど手伝うよ、てことで図書館で待ち合わせ。

内容は「恋のおまじない」(爆)！！
ローティーン向けの雑誌の原稿で、このおまじないをしてから
意中の彼に告白すれば貴女の恋は成就しますよっていうのを
今日中にあと２０枚くらい書かなきゃいけないらしい。
何でもいいから書きゃいいんでしょ、ってことで資料本のギリ
シャ神話とか適当に絡めて、彼女の文体を真似しつつ、ほとんど
私ひとりで書き上げちゃいました。
で、その後はいつもの楽しいデートです。

ところが、このことが後日思わぬ展開に。

彼女、有名な占星術師のアシスタントのアルバイトをしていた
のですが、この先生、彼女の文体でないことをすぐに見破って
私を事務所に連れて来いということになちゃいました。

都内の一等地にある豪華マンションの一室、てっきり怒られる
と覚悟して出向いた私を実ににこやかに出迎えてくれた先生から
信じられない言葉が。
「君、原稿書いてみないか？」
「君が書いたおまじないね、あれ評判良くてね、ほらこんなに
お礼のはがきが届いてさ」と見せられた雑誌に添付されてた
感想とか書いて送る専用のハガキが数十枚。

もちろん、適当に書いたおまじないに魔法の力などあるはずも
ないけれど、好きな彼に告白するかどうか迷っていた彼女たちの
背中を押す力にはなったらしい。
まあそれが本来の「おまじない」の力ってものなのかも。

そんなわけで、８０年代のある時期、当時最も売れていた女性
ファッション誌の背表紙の裏あたりにあった星占いも、
はい、私が書いてました。
あなたの奥様、読んでませんでしたか？(笑)

いや、こちらはおまじないと違って、ちゃんと先生が計算した
運勢チャートを元に書いてたので、適当に書いてたわけでは
ありませんよ。念のため。

by OZW