三ツ星倶楽部 其之八 特別編 How to buy Mercedes-Benz Parts 1/3 コピー部品は10分の1で買える!?
構成/田村十七男・芥川貴之志 撮影/山田裕之
AKU この企画も8回目を迎えるに当たり、今回はちょっと趣向を変えちゃいますよ。
170 おおっ!? まさか働くクルマ好きなオレをよろこばせるためにウニモグを用意してくれたとか? で、いきなり軌道に出てみるとか?
AKU それ面白いですねぇ。さすが妄想世代。でも残念ながら今回はクルマに乗りません。
170 クルマ無し?
AKU 末永くメルセデスと暮らすために欠かせない、部品情報をお届けしようと思うんです。そこでまず、このふたつの箱。どっちが本物か、わかりますか?
170 おなじみボッシュの黄色いパッケージ。どっちが本物かってことは、どっちかが偽物とか言うわけ? う~む、黄色が鮮やかなほうかなあ。いや、実は薄いほうかなあ。ラベルはまったく一緒だし……。
AKU まぁ、判別つかないですよね。でも実はボッシュの偽物は業界じゃ有名なんですよ。では、この段ボール箱いっぱいに入ったパーツはどうですか?
170 って、これ、全部純正部品じゃないの? これだけちゃんとしたパッケージなら疑いようがないじゃん。印刷もキレイだし。でも、あるんだ、偽物が……。いやぁ、わかんないでしょ。だって、どれも同じだよ。
AKU 手が込んでますから、素人じゃまずわかりせんよね。正解は……この二つが純正品。
170 ぎょへぇ~、ってサカナくんみたいに驚いちゃった。たった二箱って、どういうこと?
AKU それ以外はすべて、偽物ってことです。これらは中国で作られたもので、スピードジャパンが資料用に集めたものなんです。
170 さすがコピー王国。とは言え、最近はブランド品の中国製コピーとかって少なくなったと思っていたけど、まだあるんだね。
AKU いやいや、中国のコピー市場はすごいことになってますよ。ブランド品や時計も、すごい数の精巧な偽物が作られてます。メルセデスの部品もすごく多いですね。もちろんBMWもポルシェもあります。その辺について、スピードジャパンの小澤一彰社長に話を聞いてみましょう。
小澤 どうもこんにちは。
170 初めまして、小澤さん。いきなりで恐縮ですが、こんなに精巧な偽物が堂々と出回っているものなんですか?
小澤 ええ、それが現実です。業者ならみんな知っているんじゃないですか。それを本物と謳って商売するかどうかは個々の責任ですけれど、ネットオークションやアメリカの通販サイトを見ていると、これは怪しいなという部品がかなりあります。
170 なんか怖い話だなあ。たとえば、横流しみたいな感じで市場に流れて、ショップも偽物と知らずに売っているなんてことがあったりしますか?
小澤 ない、とは断言できませんね。
AKU 少なくともヤフオクとeBayには出回っていますよ。純正品としてね。当然、純正品よりうんと安く。
170 どのくらい安いんだろ?コピー商品だからって、そんなに安く出来るものなの?
小澤 ひとつの事例を紹介しましょう。部品じゃないんですけど、メルセデスにはDASという車両診断機がありまして、これはかつて純正品だと700万円しました。でもすぐに、それとまったく同じ機能を持つ台湾製のコピー品が、70万円で販売されたんです。
170 10分の1!?
小澤 さらにその後出てきた中国製は、なんと3、4万円。
170 どっひゃ~。でも、それじゃさすがに動かないでしょ?
小澤 僕らも試しに購入してみたんですが、最初は普通に使えてましたよ。でも8か月で壊れました。中を確認してみたら、ハンダ付けがあまりにひどかった。素人が作ったような感じでしたね。
170 ということは、コピー部品のハンダ付けも怪しいってことですね。
小澤 そう思います。最初はちゃんと動いていても、長くは持たないんじゃないでしょうか。
170 それにしても、700万円が3、4万円って、言葉を失うね。
AKU コピー品の価格には開発費が含まれてませんからね。ソフトウェアなんて簡単にコピーできちゃうし。
170 とは言え、していいことと悪いことってあるよなぁ……。