タイヤに窒素 その1
子供の頃、遊園地やお祭りの屋台で売っていたHeガス(昔は水素だったかも)の入った風船が大好きでした。 結構高かったのか、両親はなかなか買ってくれませんでしたが、祖父や祖母に上手に取り入ってたまに買ってもらうことがありました。 ところが、この風船、数時間でガスが抜けてあまり上がらなくなり、次の日にはもう完全に萎んでしまいます。 気体が高分子膜を透過するなんてことは知るはずもなく、私は風船の吹き込み口から少しずつ漏れていくんだと思い込んで、口の結び目の上からさらにタコ糸やセロテープでグルグル巻きにしたりしたこともありました。 もちろん結果は何も変わりませんでしたが。 ところで、今でもやってるところはありますが、タイヤに窒素ガスを入れるというのが流行りましたね。 私もタイヤ屋さんでアライメント調整してもらったときに「サービスで入れておきましたと」言われたことがあったのですが、乗り心地の違いも静粛性も正直空気との違いはさっぱり分かりませんでした。 変わったというひとも多いようですが、低すぎた(高すぎた)空気圧が窒素充填で単純に正常値に入ったから乗り心地や音が変わっただけなんじゃないかと私は考えています。 また、エアが抜けにくいという話もあるようですが、確かに透過係数は酸素などよりは窒素のほうが小さいけれど、そもそも窒素は空気の8割近くを占めるわけで、透過係数にそれほどの差はありません。 それに、だいたいタイヤの場合はゴム膜からの漏れというよりリムの接触面からの漏れのほうが圧倒的に多いわけで、透過係数の違いなんて無視できるレベルではないでしょうか。 つまり、窒素だから漏れにくいというのは、理論的にはあり得ても現実問題として有意の差はほとんど認められないと思います。 したがって、乗り心地が変わるとか、ロードノイズが変わるとかいうのも、きっとプラシーボ効果(単なる思い込み)に違いないと思っていました。 ところが、先日友人が、パンク修理後に窒素ガスを入れてもらったら音が変わったと言い張ります。 パンク直前の音とではなく、それまで正常な空気圧で乗っていたときと比べても変わったのだそうです。 彼は非常に几帳面な性格で、タイヤの空気圧はいつも自分でチェックしていて、今回のパンクもそれで発見したようです。 しかも彼はプロのオーケストラ指揮者ですから、音に関しては専門家です。 その彼が絶対に変わったというのですから、確かに何かが変わったのだと思いますが、どうも納得がいきません。 その2に続く by OZW |