メルセデスW124やポルシェ964など生産から15年以上になるような古めのお車のフューエルポンプで、装着後数ヵ月、中には数時間で異音が出てくるというクレームがここ最近増えてきました。

BOSCHの場合には、こういうクレームも受け付けてくれて、基本的にはすぐに代品を出してくれるのですが、お客様にとって初期不良はもちろんいい気分はしないでしょう。

最近になってクレームが増えてきているというというのはクオリティが下がってきているのかと思い、直接ボッシュ・ジャパンに聞いてみました。

すると、実はボッシュ・ジャパンでも異音クレームの増加は認識していて独自に調査したそうです。
結果は、装着後すぐ〜数か月以内に機能不全や異音発生したポンプの９割以上のケースで異物混入が見られ、それによるローラーやハウジングに付いた傷や破損が原因という結論に至ったそうです。

そこで、BOSCH JAPANに許可をとって当社でも取り付け後すぐに異音発生でクレーム返却されたポンプをＳファクトリに持ち込んで分解してみる事にしました。

まずポンプの電極側のカシめてある部分をペンチで緩めて外側ケースを外します。

ケース内に残っていたガソリンを出して良く見ると、やっぱりありました。
錆です。
ブラシなどの粉ではなく錆ですのでおそらくタンク内の錆だと思います。

ポンプをケースから出して単体での動作確認をしてみました。
この時点でジーというかジャーという異音が後ろ側からしていることが分かりました。

ポンプの下側(タンク側)部分です。
ここが異音発生している部分です。

ポンプの上側(エンジン側)にある電極部分を抜くとコイルが見えます。

電極部分の裏側はこんな感じです。
オルタネーターと同様なブラシがあって、ここがすり減ってしまうと寿命ということなんですが、10万Kmくらいは平気そうです。
でも、このブラシの摩耗があることからもフューエルフィルターはポンプの先（タンクとポンプの間ではなくポンプとエンジンの間）に置くんですね。

コイルを抜くとケースの底には一応、フィルターが見えます。
多くの車種ではガソリンタンク出口にもフィルターはあるのですが、やはりこのようなメッシュ状の簡単なものが多いいようです。

さらに分解を進めます。
ポンプ下側の回転部分、異音発生場所です。
ご覧の通りロータリーエンジンのようなっていて、ハウジングとローターの隙間に貯まったガソリンを送り出す仕組みです。

外側のハウジングガイドを外してみます。
丸い部品は円柱でコマのようになっています。
このコマがロータリーエンジンでいうところのアペックスシールにあたる部品になります。

コマを外してみました。
写真では分かりづらいですが、はっきりとスジ傷があります。
ただ爪で触ってもひっかかる程の深い傷ではありませんでした。

外側のガイドです。
内側はコーティングされていますがここにも全周にわたってスリ傷が確認出来ます。
こちらは爪を立てて触ると少しザラザラ感が感じられる程でした。

最後にコマを外した状態で組み立てて再度動作確認してみました。
最初の動作確認で聞こえた大きな音は確認できません。
静かなモーター音だけです。

分解して思ったのは、製品組み立て時の不具合は考えにくいと思うほど構造が簡単でした。
よほど部品の精度に問題が無い限り異音になるような要素がありませんでした。
少なくともこのポンプについては、やはりBOSCHの言うとおり異物混入によって出来た傷が、ポンプの回転に特定周波数の振動、すなわち例の「ジー」という音を発生させているようです。

現在の車両はほとんどがインタンク式のポンプになっていますが、W124あたりの車両はアウトタンクです。
経年劣化でタンク内の錆はどんなに水抜き剤を使用していても完全に防ぐことは難しいと思います。
タンク出口とポンプ内にも一応茶こしのようなフィルターはありますが、このポンプでも中から錆の粉が出てきたことからもわかる通り効果は限定的のようです。

ボッシュ・ジャパンとしてもフューエルポンプのクレームに対する今までの対処は無条件の代品提供という形でしたが、今後さらにクレーム件数が増えていくと異物混入の形跡が認められれば有償交換とせざるを得ないということでした。

一番はフューエルポンプ交換時にタンクも交換する事でしょうが高額な商品ですしね・・・。
最低限タンク出口のフィルターを確認してみる必要はありそうです。

By k