アクティブサス その2
メカニカルなパッシブサスは、124や201のマルチリンクサスで既に完成域に達してしまいました。 そうすると、それ以降のメルセデスというのは、例えるなら、既に完成形であるピアノで改良といってもせいぜい楽譜スタンドに自動ページめくりを付けるとか、もう滑稽とさえ思えることくらいしかやることがない、みたいな状態だったのかもしれません。 といって昔に戻ろうにも、もはやそれを作る材料も職人も残っていない。 (私自身、最近のメルセデスに全く魅力を感じなくなってしまったのは、このせいだったのかもしれません。) とすれば、この先は、ピアノを凌ぐ電子ピアノを完成させるしかありません。 しかも、とてつもないオーディオシステムを組み込むなりして、音域や表現力などすべての点で本物のピアノを上回らなければ意味がありません。 で、実際作ってみたら、音域も音圧も音色も全てコンベンショナルなピアノを凌ぐだけじゃなく、誰でもルービンシュタインやブーニンになれちゃう素晴らしいものが出来たけれど、1億円くらいかかっちゃった上に、1〜2年で壊れちゃうものだった。 ってのが、その1のお話だったわけです。 でも、完全に消えちゃったわけではありませんでした。 まず、予算と耐久性に対する現実的な回答を示したのが、BMWです。 車の動きは大きく分けてもバウンス(上下),ピッチ(前後傾斜),ロール(左右傾斜)とワープ(前後ロール量の差=車体のねじれ)があるわけですが、この中で、車両性能への影響度が高いロールとワープの二つのモードに絞ってコントロールすることを目的とし、前輪と後輪のスタビライザバーにだけアクチェータを搭載した、アクティブスタビライザサスペンションシステムが2002年にBMW745に採用され、BMW6、BMW5、X5と展開が図られ現在にいたっています。 (う〜ん、745は長距離ドライブしたことがありますが、もともとスポーティーじゃないからか気づかなかったなあ・・・) これと同じ流れにあるのが、トヨタですが、ハイブリッドメーカーならではの事情もあります。 ハイブリッド車やEVは常時エンジンを作動してサスペンションにエネルギを供給する事ができないため、油圧式パワーステアリングが電動パワーステアリングに移行したように、サスペンション制御のパワーソースも電動化が必須でした。 スタビのみを制御するシステムは直進時には常時アクティブに作動していない為、消費エネルギは従来のアクティブサスペンションより相当低減されたシステムですから限られた電力内で制御するには非常に好都合なわけです。 そのため、2005年レクサスGS用に搭載された世界初の電動アクティブスタビライザサスペンションシステムは、その後2006年レクサスLSと2009年レクサスRXのハイブリッド車に展開され、いよいよ量産化の段階まで入ってきています。 これに対して力技で臨んでいるのがメルセデスです。 上の図はCLのアクティブサス (アクティブ・ボディ・コントロール = ABC) の構成図ですが、これなどまさにその1で開発されてきたアクティブサスそのものです。 S600とかSL55などSクラスやSLクラスの中でも1500万円越えの上級車種のみに採用されていることから、車両価格に占める割合で考えればコストも問題にならず、仮に数年で機能低下したって、サスペンションなんてもともと消耗品なんだから定期的に交換すりゃいいだけの話だろう!というスタンスなのかもしれません。 おそらく今現在アクティブサスの乗り心地を十分に堪能できるのはこのタイプだけでしょう。 そういえば、ベンツのこのクラスの車、ちょっとだけ乗せてもらったことはありますが、サスペンションを評価出来るほどはドライブしたことがありません。 とりあえずどっかから借りて乗ってみようかな。 てことで、いつかその3に続くかも By OZW |